不器用な神野くんの一途な溺愛
「神野くん……なんでも、できますね」

「俺もそう思うよ。昔から斗真は何でも出来たんだ。何でも、たった一人でやり遂げて。その姿が一匹狼みたいな奴だなって、ひっそり思ってた」

「お、狼……」



それは案外……似合ってるかも。



「もっとニコニコして、もっと友達作ってワイワイした方が絶対楽しいって、俺は思ってたんだ。

でも、斗真はずっとツンケンしてた。

ずっとツンケンして、ずっと一人のような……それが寂しそうに見えたんだ」



希春先輩が私と目を合わせなくなった。どこか遠くを見ているような、そんな感じ。



「(希春先輩……)」



こんな希春先輩は初めてのような気がして、吸い込まれる。もっと話してほしくて堪らなくなる。

希春先輩が抱いてる思いも、昔の神野くんの姿も、どっちも聞きたくて仕方なかった。



「でもね」と希春先輩が続ける。
< 289 / 425 >

この作品をシェア

pagetop