不器用な神野くんの一途な溺愛
カキーン
野球部のボールが、空高く舞い上がる。
「まわれー!」と部員たちが声を張り上げている。
そうだ、声――
「(言わないと、伝わらない……っ)」
想いを言葉にしないと、人形と同じ。
私はもう、人形じゃない……っ。
「あ、あの……っ」
言うんだ。
もう逃げるのはやめよう。
神野くんが私と、あんなにまっすぐ向き合ってくれた。神野くんが好きになってくれた私が、私も好き。この先もずっと、神野くんに恥じない私でいたい。
だから、言うんだ――
「私、希春先輩に、何度も……何度も、助けて、貰いました。その優しさが、嬉しくて……。
神野くんと、放課後に、特訓をしようと、そう思えたのは……
希春先輩と、もっと、もっと、お話がしたかったから……ですっ」