不器用な神野くんの一途な溺愛
必死な思いで伝えると、希春先輩は照れたように笑う。



「そ、そんな!俺は当たり前のことをしただけだよ。だって困っている莉子ちゃんを放ってはおけないででしょ?」

「(そんなことない……っ)」



だって、何も喋れない私に声をかけてくれる人なんて、いなかった。手を差し伸べてくれる人なんて、いなかった。


自分から頑張ろうとしないくせに、私はいつも「待って」ばかりだった。誰かの助けを待ってばかり……。



だけど、希春先輩や神野くんは、そんな「受け」ばかりの私に優しくしてくれた。


誰にでもできることじゃない。


二人に支えられて、初めて私は「変わりたい」って、そう思えたの――



「希春先輩と、出会えて、なかったら……私は、今でも、喋れない、ままだった。

きっかけをくれて、ありがとう、ございます」

「だから大げさだって~」



にこっと、希春先輩はいつもの優しい笑みで両手を振ってくれた。
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