不器用な神野くんの一途な溺愛
「希春先輩が、私にアジサイを、見せてくれた日の事……覚えて、いますか?」

「うん。なんたって、その日に俺ら初めて会ったんだもんね」

「ふふ……そうですねっ」



私との出会いを丁寧に覚えていてくれて嬉しい。私が笑うと、きちんと笑い返してくれる先輩。それが、とてつもなく嬉しかったのを覚えている。


そして「あの感情」は、アジサイを見た時に――確かに私の中で芽吹いたものだということも、思い出した。



「希春先輩と、一緒に見た、アジサイ……とてもきれい、でした。

そして……希春先輩の事を、好きだと……そう思った、私の気持ちも……きれいで、輝いているように、思えたんです」

「莉子ちゃん……」



自分の事を「きれい」だとか「輝いてる」とか、そんな風に言うのは照れ臭かった。まるで自画自賛しているみたいで……。


でも、真剣な顔で希春先輩が頷きながら聞いてくれるから……諦めずに、最後まで話そうと決心できる。
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