不器用な神野くんの一途な溺愛

涙を強引にふき取り、そして、希春先輩を見る。

さっき、希春先輩は「人の気持ちは移ろうものだ」と、そう言った。

私の気持ちも、いつの間にかそうなってしまった。


でも――


もう既に移ってしまった気持だったとしても、きちんと伝えたい。

私が希春先輩に、どれだけの想いを抱いていたか……わがままだけど、知ってほしい。



「希春先輩、本当に、好きでした……っ。

心の支えになってくれて、ありがとう、ございました……っ」



精一杯の感謝を込めて、頭を下げる。

そして、希春先輩の言葉を待った。

すると……



「ごめんね、莉子ちゃん」



顔を上げると、希春先輩は両手で顔を覆っていた。

それは恥ずかしいからでも、照れてるからでもない、何か。希春先輩は今「何か」を必死に守ろうとしているのだと、何となく分かった。