不器用な神野くんの一途な溺愛
「ごめんね、あのね……一分待ってくれる?」
「……はい」
一瞬の時間のように思えた一分が過ぎ、希春先輩は「よし」と言って顔から手を外す。
そこには、いつもの希春先輩の笑顔があった。
「俺もね、莉子ちゃんに会えてよかったって本当に思っているんだ。好きになってくれてありがとう。勘違いとか失礼なことを言ってしまってごめんね」
「いえ、失礼なんて、そんな……」
すると希春先輩は立ちあがり「はい」と、私に手を伸ばす。
遠慮がちに握ると、ゆっくりと引っ張られ、希春先輩の隣に並んで立った。
まだ二人の手は繋がられたまま――その状態で、希春先輩は遠慮がちに口を開く。