不器用な神野くんの一途な溺愛
「(ごめんね神野くん、待っててね。すぐ追いつくからね……っ)」
前へ前へと、足が動く。
前は一歩でさえ重かった足が、なんだかとっても軽く感じた。
だけど、その時……
クンと、弱い力で私は引き止められる。
「わわっ……」
慌てて立ち止まり、引っ張られた方を見る。
すると、そこには副委員長が立っていた。
「ふく、いいん、ちょう……?」
なんでここに……?
という疑問よりも先に、副委員長が持っていた「ある物」を手渡される。
「はい、小野宮さんのカバンよ」
「……へ?」
な、なんで学年の違う副委員長が、わざわざ私のカバンを……?
すると副委員長は「たまたま廊下を通りかかったのよ」と、早く受け取るようにとカバンを揺らした。