不器用な神野くんの一途な溺愛
「小野宮、あれは、」
「今は……聞いてほしい」
俺の口を手でふさぐ小野宮。その手はわずかに震えていて……大きな目には、今にも零れ落ちそうな涙がたまっていた。
いますぐ抱きしめてぇよ。けど、我慢だ。
小野宮が橋にかけている手を、上から握り締める。すると、小野宮がまた喋り始めた。
「中学生の途中から、私、喋れなくなっちゃって……だから、高校から挨拶を任された時に、ピンチだって思ったと同時に、チャンスだって、そう思ったの」
「……それで」
「私、高校に入って変わるんだって、自分に言い聞かせて……原稿も何回も書き直しした。何回も、何回も……そして、できたの。それが嬉しくて、殻を一枚破ったみたいで」