不器用な神野くんの一途な溺愛
――その後すぐ、その足で原稿用紙を買いに、コンビニに行った。
――その時、まだ肌寒いというのに、浅い川の中で暗そうな女が、バシャバシャと水遊びをしていた。
――助けようかと思って近づいて行ったが、「げ……げ……」とブツブツ言っているのに気づいて、後ずさる。
――『完璧に、ヤベー奴じゃん……ほっとこ』
まさか……あれが、流された原稿用紙を探していた小野宮だったのか……。
そしてすぐ、後悔する。
「(あの時、助けてやれば良かったんだ……。そうすれば、こいつの高校生のスタートも何か違ったのかもしれねぇな)」
全て後の祭りだ。
俺は、申し訳ない気持ちで小野宮を見た。
けど悲観的になった俺に対して、小野宮は違っていた。
「寂しい高校生活だった、けどね」と、話すうちに少しずつ表情が明るくなる。