不器用な神野くんの一途な溺愛

「え……」


希春先輩は神野くんの事になると真剣というか、纏うオーラが変わる。

な、なんだろう……?

もしかして希春先輩、神野くんのことが嫌いとか?


けど、希春先輩はすぐに笑顔に戻った。それは、いつもの希春先輩の顔だった。


「じゃ、俺はもう戻らなきゃ!と言っても、もう委員会は終わってるかもしれないけどね。莉子ちゃんは気をつけて帰るんだよ〜」


ばいばーいと手を振りながら、希春先輩は、私からドンドン離れていく。


「 (行っちゃう……) 」


もう、さよならの時間……。

次は、いつ会えるんだろう?


と、寂しく感じ始めた時。

さっき姿を消した希春先輩が「莉子ちゃん!」と、Uターンして戻ってきた。


え、何?

どうしたんだろう。何かあったのかな?


「莉子ちゃん!」

「あ……う……?」


あの、どうしたんですか?

首を傾げる私の両肩を、ガシッと掴んだ希春先輩。


えぇ……!?


只事ではないと思って、身構える。

すると――


「自分の教室への帰り方、分かる!?」

「……へ?」


そ、そんなことで?

わざわざ戻ってきてくれたの?


「ふっ……」


可笑しくなって、笑ってしまう。

すると希春先輩が「また笑った!」と、自分の事のように嬉しそうに笑ってくれた。


「……へへ」


「笑った」って言われる度に、褒めてもらえているようで、なんだか嬉しい。

よく頑張ったねって、そういう気持ちが込められているようで……。


「(もっと“ 笑った”って言って貰えるように、頑張ってみよう)」

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