不器用な神野くんの一途な溺愛


「あ……は、ぃ……」


殴られるなんて物騒な想像をしたことに、少しだけ申し訳なくて……。心の中で、こっそり謝る。

そして、怒られないように怒られないようにと、必死に言葉を紡いだ。


「あ……が、と……」


すると神野くんは「なぁ」と、また私に話しかけた。

何を言われるのかと、思わず身構える。

だけど――


「さっきの、その……悪かった」

「……へ?」

「お前を泣かしただろ」

「……」


予想しなかった言葉に、意表を突かれる。

確かに、そうなんだけど……。

すごく傷ついて泣いたけど……。


まさか謝ってもらえると思ってなかったから、ビックリ。


「 (悪いって、思ってたんだ……) 」


ちょっとだけ、神野くんのイメージが変わる。最低最悪の人ではない、のかな……?


「も、い……」


もういいよ――そんな意味を込めて、頭をフルフルと振った。

神野くんは、私の言葉を少しの時間をかけて理解したようで、でも許してもらうのは気が引けるのか「でもなぁ……」と呟く。
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