不器用な神野くんの一途な溺愛


「怒ってねーのかよ」


ギッーーと、近くにあった椅子に座る神野くん。

え、まさか、このまま話すの……?

すると、どうやらそのようで……神野くんは私にも「座れ」の意味を込め、近くの席をトントンと叩いた。


「 (え、えぇ〜……) 」


ギッ


正直、居心地が悪すぎるから、早く帰りたい……。

そうは思っても、まだ神野くんが怖いから、言われるがままに座った。

そして考える。


――怒ってねーのかよ


「 (怒ってないかって、言われても……) 」


怒るっていうより、悲しかったんだし……。腹立つっていうより、苦手だったんだし……。

実のところ、神野くんへ抱いた感情は、恐怖が先立ってあまり覚えてない。今日も、今までも。


「 (苦手だから、日頃から関わらないようにしてたし……) 」


それに、純粋に怒れない理由もある。

だって――


「 (神野くんは、会議室でコケた私を助けてくれたし、それに……。

神野くんのあの言葉があったから、私は自分の気持ちに気づけたんだもん) 」


「希春先輩の事が好き」って言う、その気持ちに気づかせてくれたのは神野くんだ。

恋という、あたたかくて心地いい感情を教えてくれたのは――神野くん、あなたなんだよ。


だから、怒ってない。

どころか、少し感謝しているくらい。
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