不器用な神野くんの一途な溺愛

「お、こっ……な、い……」

「え、”怒ってない”っつった?」

「う……ん」


むしろ、色々――


「あ、り……が、と」

「……」

「 (あれ、今、私……) 」


ちゃんと、お礼が言えた……?

しかも、あの神野くんに?


す、すごいよ私……っ!


今までは、どんなにお礼を言っても理解されなかったり、変な言葉だと笑われたり……。

正直、お礼の言葉が好きじゃないくらいには、伝えるのに失敗してきた。


でも、今は違う。


「 (私のお礼が、きちんと言葉になった……っ) 」


嬉しくて、神野くんの前だということも忘れて「ふっ」と笑ってしまう。

その時――

一瞬だけ神野くんと目が合ったけど、フイと。すぐに逸らされてしまった。

そして目が合わないまま、会話は続く。


「あんなに泣いてたのに怒ってないとか……お前、変なやつだな」

「う、ん……」

「自覚あんのかよ」


ハハッと、今度は神野くんが笑った。

その柔らかい笑顔を見て、ハッとさせられる。


「 (知らなかった……) 」


いつも怖いと思ってた神野くんは、こうやって笑うんだね。

神野くんのこんな顔、初めてみたよ。
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