不器用な神野くんの一途な溺愛
ガキのままじゃねんだよ。いつまでもちっせー弟の扱いすんのやめろよな――
何度そう言っても、兄貴は垣根を越えてやってくる。あの時もそうだった。
新入生代表の挨拶。
教頭が電話越しに言ってた、
『君には心強い味方がすぐ側に居るだろう』
あれは、同じく2年前に新入生代表の挨拶をした兄貴のことだ。なにが「さすが神野くん!」だ。ふざけんな。俺と兄貴を同じ土俵に立たせんじゃねぇ。
『やったわ〜!新入生代表の挨拶ですって!さすがねぇ!』
『お〜斗真やるねぇ』
『今夜はお祝いよ〜!』
斗真やるねぇ、と言った兄貴は、もちろん俺の原稿を手伝おうとした。
「起承転結っていうのがあってね」と小学生が教わるような内容から、手取り足取り俺に教えようとすんのも腹たった。
だから、原稿は自分の力で書いた。兄貴が介入した挨拶なんて、ぜってー読みたくねぇ。
だけど、悪運は続く。