大学生をレンタルしてみた
「片付けしてるんですか」

椅子を置いてきた晴人が私に近付いてきた。

「まあね、一番大事な仕事かも」
「昼何食べたんですか」
「あー、ラーメン研究会の海老塩ラーメン」
「負けたー」

彼はその場にしゃがみ込んだ。

「戻らなくていいの」
「行きますよ」

そう言いながらなかなかこの場を離れない。
次々と運び込まれてくる物品を、私はそれぞれ促し続ける。思いの外順調に予定通りに片付けが進む。

いつのまにか晴人は何も言わずに置かれた物品を倉庫に仕舞う作業をしていた。実行委員の仕事だ。とは言ってももうすぐで彼らはステージに移動しないといけない。

「みんな待ってるんじゃないの、戻ったら」

倉庫から戻ってきた彼に言う。

「まあ、どうせ向こうも片付けなんで」
「だから片付け手伝わなくていいの」
「男手多いし別に俺いなくても」

そう言ってまた台車にパイプ椅子をこれでもかというほど乗せて運び出す。

これってボランティアなのかな。

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