大学生をレンタルしてみた
外はすっかり暗くなり、実行委員もフィナーレのステージへと移動し、体育館は静かになった。貸し出した物品はほとんど戻ってきていて、後は倉庫に戻すだけ。

別に必ずしも今日やらないといけないわけではない。去年は翌日に職員数人でやった。

晴人はまだせっせと倉庫と体育館を台車を引いて往復している。

「もういいよ、明日やるし」
「あとこのくらいすぐですよ、やりましょ」

彼はサクサクと台車にテーブルを乗せていく。

「フィナーレのステージ観に行ったら」
「興味ないっす」

ヒヒッと笑うと控えめな八重歯が見えた。少し、思わず可愛いなと思ってしまった。

あの日、レンタル彼氏であの一覧を見た時から、きっと私は彼の顔が好みなのだ。

普通の大学生だけど、なんとなく好みなのだ。

「これ全部今日中にやったら、なんかご褒美ありますか」

唐突に彼が聞いてきた。後ろでパンパンと小さな打ち上げ花火の音がする。結構高かったやつだ。

「え、お金取るの」
「お金っていうか」
「もしかして1時間4,000円?」
「やめてください」

彼は笑いながら私の隣に立つ。

誰もいない、明るく照らされた夜の体育館。

みんなフィナーレに集中している。

「じゃあ何が欲しいの」
「この後ご飯奢ってください」

彼が笑顔で私の目を覗き込む。

「ご飯目当てでずっと手伝ってくれてたの」
「ご飯目当てっていうか」

彼はモゴモゴと語尾を濁しながら、また台車の方へと戻って行った。

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