大学生をレンタルしてみた
お酒
私たちは餃子居酒屋へ入った。4人掛けテーブルへと通される。

彼は上着を脱いでTシャツ姿になった。こう見ると本当にただの大学生で、周りから見れば弟と一緒にいるように見えるだろう。

「あの日ぶりですね」

彼が言って思い出す。

「あの時、すっごいつまんなかったよ」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい」

彼は深々と頭を下げる。

「初めてだったんですよ、で、ワンポイントテクニックみたいなの頭に詰め込んで行ったんですけど、あの日帰りながら俺向いてないなって思いました」

今思い出しても震えるほどの中身のない会話。続かないし、お互いに緊張して面白くない話を展開するばかり。

「2時間で地獄でしたね」
「店員から追い出されなかったら私たちどうしてたんだろうね」
「俺はまあ4,000円貰えるからいいとして、木下さん損しかないですよね」

あははと彼は笑う。あははじゃない、本当に苦痛だったんだ。私は運ばれてきた餃子に箸を伸ばす。

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