大学生をレンタルしてみた
「マッチングアプリとかいろいろやったんですけど、出逢えば出逢うほど恋愛とか向いてないって思うことばかりで面倒になってしまったんですよね。でも好きになれる人に出逢えないってすごく苦痛じゃないですか」

好きになれる人に出逢えない。私もなんとなく分かってしまう。
恋愛が素敵なのは分かってはいるけど、誰のことも好きになれない。誰にも強制されてないはずなのに、好きな人がいないことがすごくつまらないことのような気がしてくる。

「木下さんはいつからいないんですか」

突如自分へと向けられた質問に慌てる。

「私?私はいつからだろう」

そもそもいたことがない、なんて言えない。
好きな人さえできにくい私が、好きな人と両想いになれる確率なんてすごく低いのに。

私は考えるフリをしながら酎ハイを喉に流し込む。
ここで「いたことがない」と言ったら重いと思われるだろうか、しかも年下の大学生に。何人と答えるのがベストなんだろう。

「ずっとですか、もしかして」

私が答える前に彼が当ててきた。

「ずっとって言うか、前過ぎて」
「前過ぎる・・」
「付き合ったって言うほど付き合ったわけでもなくて」

彼は「はあ」といった具合に聞いてはくれたものの、恐らくずっといないことがバレた。空気を流すように誤魔化すように、私たちはお酒を飲んだ。

< 22 / 56 >

この作品をシェア

pagetop