大学生をレンタルしてみた
立ち上がると思った以上に飲んだことが分かった。明日も仕事なのに。こんな時にオープンキャンパスで行う奨学金制度の相談会なんて思い出してしまう。所得制限について去年から変わったから資料差し替えしないといけない。推薦で合格が決まった家庭から学生寮について問い合わせが来てたんだ、明日忘れないで返事しなくちゃ。グルグルと酔いながら必死に明日の仕事を考える。

「大丈夫ですか」
「結構飲んじゃった」
「すごい飲んでましたね」

晴人がサッと肘を私の前に突き出してくれた。

「つかまります?」

いい年して何をしてるんだろう。
私は彼の腕につかまって、ふらつく足で外に出た。

「ここから何で帰るんですか」
「バス」
「バス?何番ですか、バス停教えてください」
「でも歩いて帰れる」
「無理ですって」

水の中にいるような世界で、水面の向こうから必死に話しかけてくれる彼がいる。私はゴボゴボと沈みゆきながら、意識が遠くなる中で彼に答え続けた。

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