大学生をレンタルしてみた
「じゃあ今何のバイトしてるの」
「何もしてないから今こうやって求人見てるんじゃないですか」
「だからいつも体育館で遊んでるんだね」
「暇そうって言いたいんですか」

私も上の方の求人を見上げる。
そこに期限が過ぎたものを見つけてしまった。

「あ、脚立忘れちゃった」

独り言をこぼすと、隣で彼が私の視線を追う。

「どれですか、俺やりますか」

170センチを軽く超す高さから私を見下ろす。

「じゃあ、あの引越し屋のバイトのやつ剥がして」
「これか」

あっさりと手が届いた彼は、求人票を剥がして「はい」と私の手に置いた。

「何かあったらいつでも呼んでください、1時間4,000円で何でもやるんで」
「お金取るんだ?」
「取りますよ、木下さん専属のレンタル・・」

そこで彼は言葉に詰まり、目を私から逸らした。私が言葉を補う。

「何でも屋?」
「何でも屋ですね、それです」

うんうんと頷いて求人を見つめる。

「引越し屋か、応募しよっかな。でも春には就活も始まるから無理かな」

彼は独り言をこぼしながらあくびして、生協へと入っていった。私も剥がした求人票を整え、業務室へと戻る。

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