大学生をレンタルしてみた
私は手を洗うと、買ってきたフォーを温める。一方で晴人は早速お酒とアイスを取り出した。
小さなローテーブルを前に二人で並ぶ。
晴人はニットキャップを取り、頭をブンブンと振った後ペシャンコになった姿を見せた。思わずその頭を撫でると、彼の体温が手を伝ってくる。
電子レンジの音が鳴った。私は立ち上がりフォーを取りに向かう。彼は早速アイスを食べ始めた。
「美味いですか」
隣で彼が言う。
私のフォーがパクチーの匂いを放つ。
「俺、パクチー苦手なんですよね」
「食べてみる?」
「いらないです、俺の食べます?」
チョコチップバニラのアイスをスプーンですくって私に向ける。私はそっと口を開くと、そこにスプーンを運んできた。
「美味しい?」
「美味しい」
「よかった」
彼の滑舌は悪い。声にも癖はあるし、濁声だし、お世辞にもいい声というわけではない。
それでも居心地良く感じるのは、彼との距離のせいだろうか。
私の耳は、たくさんの声の中から彼の声だけを選別する力を持ってしまった。
彼はゆっくりとアイスを口に運び、お酒を飲む。目にかかるほど伸びた前髪が、ハーフパンツからはみ出たふくらはぎが、まだ学生なんだと感じさせる。顔の小ささの割に首が長いことに初めて気付いた。
ああ、彼はすべてのバランスがいいんだ。
何かに突出してるわけでもなく、それでいて心地良いのはそういうことだ。
「食べ終わったら俺はもう用無しですか」
彼が掠れるような声を漏らしてゆっくりと私を見た。
「まだ帰りたくないんですけど」
小さなローテーブルを前に二人で並ぶ。
晴人はニットキャップを取り、頭をブンブンと振った後ペシャンコになった姿を見せた。思わずその頭を撫でると、彼の体温が手を伝ってくる。
電子レンジの音が鳴った。私は立ち上がりフォーを取りに向かう。彼は早速アイスを食べ始めた。
「美味いですか」
隣で彼が言う。
私のフォーがパクチーの匂いを放つ。
「俺、パクチー苦手なんですよね」
「食べてみる?」
「いらないです、俺の食べます?」
チョコチップバニラのアイスをスプーンですくって私に向ける。私はそっと口を開くと、そこにスプーンを運んできた。
「美味しい?」
「美味しい」
「よかった」
彼の滑舌は悪い。声にも癖はあるし、濁声だし、お世辞にもいい声というわけではない。
それでも居心地良く感じるのは、彼との距離のせいだろうか。
私の耳は、たくさんの声の中から彼の声だけを選別する力を持ってしまった。
彼はゆっくりとアイスを口に運び、お酒を飲む。目にかかるほど伸びた前髪が、ハーフパンツからはみ出たふくらはぎが、まだ学生なんだと感じさせる。顔の小ささの割に首が長いことに初めて気付いた。
ああ、彼はすべてのバランスがいいんだ。
何かに突出してるわけでもなく、それでいて心地良いのはそういうことだ。
「食べ終わったら俺はもう用無しですか」
彼が掠れるような声を漏らしてゆっくりと私を見た。
「まだ帰りたくないんですけど」