大学生をレンタルしてみた
骨の筋が通る左手が私の頭を覆い、右手が私の腰に回る。強制力のない優しさ。少し眠そうな目にじっと見つめられて、動けなくなる。

瞳の引力に吸い込まれそうになりながら、彼の目を見つめ返していると、そっと顔が近づく。

そしてわずかに彼と私の唇が静かに重なった。

少し離れた後、彼の手がゆっくりと私の体のラインを撫で始める。彼はまた顔を傾けキスをしながら私の口に舌を入れてきた。

あ、だめだ。

朝まで帰りたくないってそういうことか。どうしよう。

部屋にキスの音だけが響く。ゆっくりと晴人に体重を乗せられ、私は背もたれにしていたベッドに頭を乗せる。晴人は私のお腹の上にまたがり2回キスをした後、顔を離した。
きっと私は戸惑いの顔をしてたと思う。

全く何も決めてなかった。この先のことを。

「どうしたの、急に。全然そういうつもりじゃなかったんだけど」

思わずそう呟いていた。

「え、ごめんなさい。なんだろう、そういう雰囲気だと思って」

晴人は口元を手で覆って、彼自身も驚いた顔をしている。

「あの、今の俺の間違いなんで忘れてください」
「え?」
「調子乗りました」

急に彼は立ち上がり、床に丸めていた上着を手にした。帰ってしまう、と咄嗟に思った。

私は反射的に彼のスウェットの裾を掴んだけど、ゆっくりとその手を解かれる。

「やっぱり違いますよね、なしにしましょう、今の」

ニッと口角を上げた。上着を羽織り、ニットキャップを深く被る。

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