大学生をレンタルしてみた
「帰るの?」
「ごめんなさい、本当に。俺が悪いです」
床に置かれたリュックを手に取った。玄関へと向かう背中を見て、私は財布に手を伸ばす。情けない。なんなんだろう。
気付いたら中から五千円札を出して晴人に突き出していた。
「朝までいてくれるんじゃないの」
向けられたお札に苦笑を見せた。そして優しく私の手を下ろす。
「そういうのいいです」
彼は手に持ったリュックを足元に置き、お尻のポケットから財布を取り出した。
「すみません、今金欠なんですけど」
そう言いながら小さな財布を開く。中から取り出したのは1枚の諭吉と2枚の英世。
「こういうの全部ゼロにしませんか、すみません奢ってもらった飯代まで今返せなくて」
私が受け取らずにいると、グイッとさらに差し出してきた。
「これずっと使えてなかったんで返します。返さなきゃ返さなきゃって思ってたんです」
無理やり私の手を開いて、そこに押し込むようにお金をねじ込んだ。そして頭を下げる。
「すみませんでした」
私はこれ以上呼び止めることもできず、手にお金を握ったまま固まってしまった。彼は頭を上げると、静かに私の部屋を出て行った。
お金と体が目的なだけだったんだろうか。
21歳の大学生が、私に恋に落ちるなんてあるわけないか。
わずかに芽生えていた恋を、私は静かに諦めた。
「ごめんなさい、本当に。俺が悪いです」
床に置かれたリュックを手に取った。玄関へと向かう背中を見て、私は財布に手を伸ばす。情けない。なんなんだろう。
気付いたら中から五千円札を出して晴人に突き出していた。
「朝までいてくれるんじゃないの」
向けられたお札に苦笑を見せた。そして優しく私の手を下ろす。
「そういうのいいです」
彼は手に持ったリュックを足元に置き、お尻のポケットから財布を取り出した。
「すみません、今金欠なんですけど」
そう言いながら小さな財布を開く。中から取り出したのは1枚の諭吉と2枚の英世。
「こういうの全部ゼロにしませんか、すみません奢ってもらった飯代まで今返せなくて」
私が受け取らずにいると、グイッとさらに差し出してきた。
「これずっと使えてなかったんで返します。返さなきゃ返さなきゃって思ってたんです」
無理やり私の手を開いて、そこに押し込むようにお金をねじ込んだ。そして頭を下げる。
「すみませんでした」
私はこれ以上呼び止めることもできず、手にお金を握ったまま固まってしまった。彼は頭を上げると、静かに私の部屋を出て行った。
お金と体が目的なだけだったんだろうか。
21歳の大学生が、私に恋に落ちるなんてあるわけないか。
わずかに芽生えていた恋を、私は静かに諦めた。