大学生をレンタルしてみた
「こういうことを言うのは大変申し訳ないんですが、学びたい意欲があれば境遇関係なく学べる環境を、という点を第一に今の制度に至ってますので、その点は公平な制度となっております」

私が機械的にそう伝えると、目の前のお母さんの目の色が変わった。

「どこが公平なんですかって話をずっとしてきてるのに、話にならないです。他の人と変わってもらえますか。職員にももう少し寄り添っていただけないと通わせられないですよ、こんな学校」

一室に響き渡るキンキン声。私は笑顔を作って答えた。

「少々お待ちください、上の者呼んできますので」

限界だと思った。私は急いで席を立ち、別の部屋で留学制度について説明している課長を呼びに行く。

廊下に出て一人になると、フッと糸が切れてしまったように目の前がぼやけた。こんなところで泣いてる場合じゃない。目頭に来た感情をため息に乗せて外に出す。

分からないよ、子どもがいる環境なんて。

目を瞑る。ゆっくりと深呼吸すると、まぶたの向こうで太陽の光が揺れるのが分かる。

私は課長を呼びに行き、急遽対応をしてもらった。私は課長と変わって留学制度の部屋で時間を過ごしたが、10分ほどして課長が戻ってきた。なんとか帰ってもらったようだが、かなり苦戦したようだ。

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