大学生をレンタルしてみた
再生
なんとか一日目を終え、早く大学を出る。
すっかり暗くなった空の下、トレンチコートがなんとか寒さを凌いでくれる。ストールに顔を埋め、ポケットからイヤホンを取り出した。

ノイズキャンセリングが外の世界と遮断してくれる。きっとこれなら彼が近くにいたとしても気付かずにいられるだろう。

音楽が耳に流れ出す。シャッフルでかけたのに、こんな時に限って失恋ソングが真っ先に流れた。

晴人は今日どんな気持ちで私に話しかけてきたんだろう。

もしかしたら何てことのないことかもしれない。彼は平気なのかもしれない。

私だけ全然平気じゃないんだ。

好きだったのかな、私。これってやっぱり失恋だったのだろうか。

ああ、だから誰のことも好きになりたくなかったんだ。

昔から何度も軽く恋して、そして失恋して、すごく苦しいから。こういう気持ちがすごく嫌。

やめましょう、と言われてるんだ私。もう彼には望みは何もない。だって今日もあまりにも普通だった。

私ばっかり意識して本当にバカみたい。

気付けば音楽はサビに突入していて、まるで私は漫画の主人公みたいな気持ちになっていた。

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