大学生をレンタルしてみた
バスを乗り継いで徒歩2分。いつも通りの毎日。2日連続仕事。こんな日もある。

今月中に職員それぞれ重ならないように2回振替休日を取る。銀行と病院に行こう。

カンカンと音を立てて階段を登る。ああ、真っ暗で寒いあの部屋が私を待っている。明日もあるから今日は早く寝よう。

真っ直ぐ続く外廊下。どんな人が住んでいるのかさっぱり分からないマンション。真ん中にある私の部屋。すっかり冷えたドアノブ。

「冷た」と思わず声が漏れる。

ドアを開けるとやっぱり寂しい一人暮らしの1Kの部屋。朝バタバタと出てきたままの状態で私を待ってくれている。

あの家族もそんなに家賃が高いなら、狭いアパートに引っ越せばいいのに。

昼間の親子のことをふと思い出しながらストールとコートをラックに掛ける。
ため息が漏れた。そしてすぐに喉と鼻の奥が痛くなって涙腺がぶわっと緩んで、私はあっという間に泣いた。

疲れた。

今日私へ向けられた言葉達が一斉に襲ってくる。そんなに私悪いことしたかな。私の説明がダメだったのかな。

床に座り込み、顔を伏せる。ああ、明日もこんな日が来るなんて嫌。そう思ってもどうしようもない。

スマホの画面が光った。電話だ。
飯塚晴人。

< 43 / 56 >

この作品をシェア

pagetop