大学生をレンタルしてみた
「本当はちゃんと付き合いたいんですけど、まだダメだと思ってます」

私は自分の体をそっと突き放すようにして、彼から体を離し、そう話す彼の顔を見た。

その顔はクシャッと優しく笑っていた。

「俺が学生だからって言うのもあるし、木下さんにもちゃんと選ぶ権利あると思うんで。でも俺はちゃんと付き合いたいって思ってます」
「いつになったら付き合うの」
「俺が社会人になったら」

そう言ってふにゃふにゃと笑う。私も釣られて笑ってしまう。

「本当に?社会人になれるの?」
「なれますよ、バカにしないで下さい」
「なんで社会人になったらなの?」
「収入ない恋人なんてヒモっぽいじゃないですか」

晴人は胸元をさわさわと撫でて笑う。

「学生だから仕方ないじゃん」
「そうですけど」

笑った彼の口元から特徴的な歯が覗く。私は彼の手に触れると、改めて目が合った。

少し体を私の方に傾けて、彼はそっと私にキスをする。

「ねえ、付き合うって何」
「ちゃんと正々堂々と友達にこの人が彼女って紹介すること」

彼の中でかわいい基準があるようだ。
また晴人がキスをしようとしてきたので、そっとその体を手で止めた。

「今のこの関係は何なの」

彼は少し考えて、笑う。

「お友達」

私も思わず笑ってしまった。
お友達とキスをするんだ、この人は。

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