嘘つき運命ごっこ
「私はね、ずっと好きな人のことが忘れられなかったから、いくらおじいちゃんが熱心にお話してくれても、ずっと断っていたんだけど……」


ふう、と、一息ついたおばあちゃんは、諦めるように笑った。


「あまりにも何日も私の元へ通ってくれるから、困っていたはずなのに、いつの間にかおじいちゃんが来てくれることを待つようになってしまったのよね」


初めて聞くふたりのエピソードは、知らない本の物語を聞いているようで、不思議な気持ちになる。


私は、祖父母になってからのふたりしか知らなかったから。


「ある日、いつものようにおじいちゃんを待っていた日。その日、初めておじいちゃんが来なかったの。二年間続いて、初めて」


二年……。
おじいちゃん、頑張ったんだな。


「焦ったわ。もう、私のことなんてどうでもよくなったのか、他に好きな人を見つけたのか、って」
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