嘘つき運命ごっこ
「それでね、気づいたの。自分が、どれだけこの人のことを待っていたのか、って。ああ、恋をしていたんだなぁ、って。おかしいわね、ずっと別の人のことを想っていたはずなのに」


顔を赤らめて笑う姿に、こっちまで恥ずかしくて嬉しくなる。


「すごいね、おばあちゃん!おばあちゃんは、運命の人を見つけたんだね!」


手を握って力説すると、おばあちゃんは「運命?」と、首をかしげた。


「おじいちゃんは、おばあちゃんの運命の人だったんだよ!だって、ふたりはずっと赤い糸でつながってたんだから」


「赤い糸」と口走ってしまい、慌てて口を押さえる。

だけど、おばあちゃんは特に気にする様子もなく、「芙結ちゃんは、昔から赤い糸の話が好きね」と、笑っただけだった。


「……そうね、おじいちゃんは、運命の人だったのかも。出会ってから、ずっと幸せだったわ」


そう言って、空を見上げる視線を追う。

おばあちゃんの目には、その先に何が見えているのか、私には分からない。


だけど、私には見えていた。

おばあちゃんからつながる赤い糸が、空に続いているのを。
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