嘘つき運命ごっこ
「大丈夫?」

「あ、学さん、ありがとう」


暗い顔を見せないように、パッと一瞬で笑顔を張り付ける。


「ずいぶん大荷物だな」

「なんか、いらないものいっぱい持っていっちゃって」

「貸して」


学さんは、私が両手で持っても重かったかばんを、片手でヒョイっと軽々と持ち上げた。


「えっ、そんな、いいのに」

「部屋の前に置いとく。中までは、入らないから」


そういう意味で遠慮したんじゃなかったんだけど……。

ありがたく甘えることにして、その背中についていく。


久しぶりに見た。

学さんにつながっている、私の赤い糸。

どちらかが死んでも、おばあちゃんたちみたいに、空まで……。


部屋の前について、学さんが振り返る。
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