嘘つき運命ごっこ
ちょうど学さんのことを考えていたから、ドキッと心臓が跳ねた。


荷物を廊下に置いてくれて、学さんが私の顔をじっと見た。

変な表情を見せないようにと、私は変な笑顔を張り付けたまま。

……だったのに。


「別に、こんな時まで笑おうとしなくていいけど」

「え?」

「三日前、……家を出る前、すごい悲しそうな顔してたから」


声に詰まる。

何かを言わなきゃと、口を開いたその瞬間、涙がポロッと零れた。


「あ、あれ?」


何とか止めなきゃと頬に手を当てるけど、涙は次々と溢れてくる。


学さんは深く息を吐き、私の頭にそっと手を置いた。
< 110 / 261 >

この作品をシェア

pagetop