嘘つき運命ごっこ


パンッ!!

両手を頬に叩きつけ、その音に瑞貴がびくっと静止した。


「え、芙結、どうしたの」

「あ、ごめん……」


いけない、思い出してしまった。

想像していたものとは、随分かけ離れた運命の出会いを。


「てか、どんななの?その運命の相手って」


結論から言う。
最悪だった。


「うん、かっこよかった」


顔はね。と、引きつった笑顔で、心の中だけで付け加える。

本当は、好感度は二桁もあるのか怪しい。


でも、大丈夫。
運命の人なんだから。


「あいつなんて大ッキライ!だけど、でも、どうしてこんなに気になるの?」みたいな。
いつの間にか好きになっていくことってよくあるし。

少女漫画とかで、一万回見た。


思っていた100倍は口が悪かったけど。

現に、学さんのこと、めちゃくちゃ気になってるし。

オッケー!ここから始まるんだ!
……多分!


昨日から、自分にそう言い聞かせ続けていないと、心が折れそうになる。

いや、だって、私も悪かったし。

いくら赤い糸が結ばれてびっくりしたからって、あれはなかった。

唐突にあんなことを言われたら、誰だって引くに決まってる。


「いいや、それでも俺は諦めないから」


瑞貴の真剣な表情に、不覚にもドキッとするけれど、すぐに右手の小指を見た。

相変わらず伸びている、赤い糸。

その先は……。

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