嘘つき運命ごっこ
「おい、どうした?」


目の前で手をヒラヒラとされて、ハッと気づく。

学さんが、眉を寄せて私を見ている。

その手から伸びる赤い糸は、真っ直ぐに私の右手に繋がって、結ばれている。


「そんなにあそこのふたりが気になるなら、店変えても……」

「う、ううん、大丈夫……!せっかく並んで入ったのに、もったいないよ。オムライス食べたかったし、楽しみ」


その提案に、急いで首を振って笑顔を作った。

学さん、本当に変わったな。

一緒に出かけてくれただけでもすごい進展なのに、文句も言わずにこの人気店に並んでくれたり、こうやって向い合わせになってふたりきりで会話をしているなんて、嘘みたい。
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