嘘つき運命ごっこ
「最近まで、近くに住んでいるなんて知らなかったの。再会した時、お互いすっかり年をとっていたけど、すぐに分かったわ。世界って狭いのね」


少女のように頬を染めて、嬉しそうなおばあちゃんに、めまいが止まらない。

クラクラ……する。


「時代が時代だったからね、自分が死んだことにされても、中々故郷に知らせる術はないし、海外からも帰れなかったらしいの。本当にびっくりしたわ。思わず、足があるか確認しちゃったくらい。
今はね、昔のことはすっかり笑い話になっちゃって、いいお友達なのよ」


おばあちゃんが話し終わらないうちに、縁側からフラッと立ち上がる。


見間違えじゃなかった。
若菜の赤い糸は、ほどけたんだ。

おばあちゃんも……。


「ごめん……、せっかくお茶入れてくれたのに。帰るね、私……」

「もっとゆっくりしていったらいいのに」

「ううん、学校に忘れ物もしちゃったし……」

「そう。でも、芙結ちゃん大丈夫?顔色が良くないみたい」

「うん、大丈夫」


心配してくれるおばあちゃんに、口角を上げて答えるだけで精一杯だった。


それなら、私が見えるこの糸は……何?
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