嘘つき運命ごっこ
瑞貴と目線を合わせるために、屈む。

すごい汗……。

私からの返信が無いせいで、居場所も分からないのに走り回ってくれたのかな。


「心配かけてごめんね。ちょっと気分が悪くなっただけなんだ。でも、もう大丈夫だよ」


若菜のことは、いくら瑞貴でも言うべきじゃない。

若菜だって、自分が失恋したことを人に知られたくはないはず。


「かばん、ふたり分も抱えて、重かったでしょ?ありがとう」


自分の分を受け取ろうと、両手を差し出す。

瑞貴はそれをじっと見つめて、手を伸ばした。
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