嘘つき運命ごっこ
ありがたい、とても。

ありがたい……んだけど。


私は、リビングのソファーに移動して、テレビをつけながらクッションを抱きしめた。

学校から帰って、即家事に追われる。

ずっとそんな生活だったから、今さら自由な時間が出来ても、何をしていいのか手持ち無沙汰になってしまう。

瑞貴と遊んでから帰ればよかったかな……。


トントンと、包丁がまな板を叩く音が、リビングにまで響いてくる。

そっか、ママがいる家庭っていうのは、こういう感じなのか。


「……」


夕方って、こんな番組を放送してるんだ。

いつもこの時間は、キッチンでスマホで動画を流していただけだったから、知らなかった。


なんて、変に感心しながら画面を見つめていると、玄関からチャイムが鳴り響いた。


「はーい!」


元気よく返事をして、ソファーを飛び降りる。

お客さんかと思ったけれど、すぐにガチャっと扉が開く音が聞こえて、


「お邪魔します」


そこから届いたのは、昨日私を地に落とした声と同じもの。
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