嘘つき運命ごっこ


早く登校しすぎたひとりの教室で、梨沙子は自分の右手を見て呟いた。


「まさか、芙結ちゃんにも糸が見えていたなんて」


梨沙子は、自分の右手小指に結ばれた、青い糸を見つめた。


「梨沙子と瑞貴くんには、青い糸なんだけどなあ。芙結ちゃんは、全部が赤に見えてるのかな」


梨沙子には、見えていた。

入学式当日、隣同士に並んで、赤い糸を繋いでいる芙結と瑞貴の姿を。

そして、目の前で結ばれた、自分と瑞貴の青い糸が。
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