嘘つき運命ごっこ
ため息と共に、呆れたような表情を向けられ、ハッと気づいた。


「あ……」


とっさに一歩退いて、そこから先は踏み入らない意志を示す。


気まずくてうつむいていると、学さんはもう一度ため息をついた。


「あのさ、別に俺に気をつかおうとか、考えなくていいよ。どうせ、来年卒業したら家出るつもりだし」

「えっ……」

「この家族だって、いつまで続くか分からないだろ。馴れ合ったって、意味なんかない」


パタンとドアを閉められ、ひとり廊下に取り残される。

赤い糸だけが、繋がったまま。


どうして、そんなことを言うんだろう。


「……」


自分の指に赤い糸があることに、慣れない。

やっと見つけたのに、出会いはすごくあっけなかった。

もっと、体に電気が走るくらいの衝撃的なものになると思っていたのに。

一目見ただけで、恋に落ちると思っていたのに。
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