嘘つき運命ごっこ
だから、雨は嫌い。

嫌なことを思い出す。

頭の中で、小さな私が震えて泣いている。


「ママ……」


誰にも、……本人にも絶対に届かないことを知っていながらも、呟かずにはいられない。


──ピンポーン。


「っ!!」


絞り出した声に応えるように、玄関からチャイムが鳴る。


弾かれるようにソファーから飛び降りて、走り出す。

向こう側の人物を確認もせずに、飛び込むようにドアを開けた。
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