嘘つき運命ごっこ
「いいよー、俺だって今さら諦めないし。理由が、赤い糸が見えるからとか言われてもさぁ」

「……」


そう言ってため息をつく瑞貴に、本当は「ありがとう」と言いたいけれど、それは残酷な気がするから、口をつぐむ。

瑞貴が未だに好きの気持ちをくれるのは、彼自身がまだ赤い糸の相手を認識していないから。


「ってことで、芙結。今日の放課後どっか行かない?」


「ってことで」って、どこにかかってるんだろう。

そんな切り替えの早さは、昔から変わらない。

懐かしさに、つい笑いが漏れる。


「ごめん、今日ね、新しいママとの食事会なんだ。顔合わせっていうかさ」

「えっ、今日だっけ?栄一(えいいち)パパさんのお嫁さん」

「うん。新しいお兄ちゃんも一緒にね。高三なんだって」

「そっか。芙結だったら、きっと仲良くなれるよ」


瑞貴のパッと明かりが灯るような笑顔に、期待感が膨らむ。


数ヶ月前から、パパの右手には赤い糸が見えるようになった。

その先には、再婚相手の女性がいるのかもしれない。


パパとの赤い糸、繋がってるといいな……。

今度こそ。
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