嘘つき運命ごっこ
心の内を吐き出して、ハッとする。

……言ってしまった。

ずっと誰にも明かさずにいた、本音を。

頑張って新しい家族になろうとしていたのに。

頑張って、パパと直子さんの前では明るく振舞おうと思っていたのに。

学さんも、こんなことを言われたって、きっと困るだけ。


「っ!?」


不意に、頭の上にふわっと落ちてきた手のひらに、声にならない叫びが飛び出す。


撫でられて……いる?

学さんはぎこちなく手のひらを動かしながら、目をそらした。


「……悪い。泣かせたかったんじゃないんだけど」


あったかい……。

大きな手のひらが、心地いい。


「俺も、あんたと同じこと……思ったことがある。本当の父さんは、優しい人だったから。だから、他に家族なんかいらなかった」


学さんも?

意外。
家族関係とか、関心がなさそうに見えたのに。


「大人は、勝手だよな」


……見間違いかもしれない。

すごく優しい笑顔が、外から漏れた光で、一瞬だけ照らされた気がした。
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