嘘つき運命ごっこ
暗くてよかった。

停電が続くのは困るけど、まだ明るくなりませんように。


恥ずかしさが前面に出すぎて、パクパクと急いで口に運ぶ。

冷たいよりも、温かい方が絶対においしかったはず。

そう考えると、やっぱり停電にはならないで欲しかった。


かき込むように食べ終わって、すぐに立ち上がる。


「ごちそうさまっ!」


さっさとシンクに食器を運ぶ。


「停電が復旧したらまとめて洗うから、食べ終わったら学さんもここに置くだけで」

「うまいよ」


自分の声に重なって、うまく聞き取れなかった。

シンクに手を入れたまま、一瞬体がかたまる。


ゆっくり振り向くと、テーブルに置いたライトに照らされて、学さんの顔がぼんやりと見えた。
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