嘘つき運命ごっこ
「あ、いや」


余計なことをしたかもしれないと、密かに落ちていると、学さんは申し訳なさそうに眉を歪めた。


「ごめん、言い方が悪かった。今まで、母さんは仕事で朝早くて朝ごはんの用意なんかされてたことなかったし、自分でわざわざやろうと思ったこともなかったからってだけで……」


パチパチと何度も瞬きながら学さんを見るけど、当の本人はわざと顔をそらして、目が合うことはない。


「あ、……ありがと。朝早くてキツかっただろ」


昨日も思ったけれど、人にお礼を言い慣れていないのだろうか。

小さい声と少し染まった頬が、それを物語っている。


なんか、昨日から一々可愛く見えるな……。


「何言ってるんですか。そんなの平気。だって、家族なんだから」
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