嘘つき運命ごっこ


ふたりで朝食を食べ終わり、遠くの高校に一足早く家を出た学さんを見送り、私はひとりリビングでボーッとしていた。


目の前に開いた右手を掲げて、見つめる。


初めてだったな……。
ママが出て行ってから、雷の夜にそばにいてくれた人は。


「……」


なんだろう、この気持ち。

昨日は暗かったし、雷の光と音が怖くて、あまり意識する余裕もなかったけど……。


思い出すと、あの近すぎた距離が恥ずかしくなる。
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