嘘つき運命ごっこ


校門を通ってすぐ、見覚えのある背中が前方を歩いているのを見つけた。

若菜。
そして、隣にいる男子生徒は、後ろ姿でも杉尾先輩だということが分かった。

ふたりの間に、赤い糸が繋がっていたから。

時折見える杉尾先輩の横顔は笑顔で、話にうなずく様子の若菜は少し浮かない表情を見せている。

どんな内容なのかは分からないけど、杉尾先輩の口から「ミナミ」と発せられたのが聞こえたから、きっと自分の彼女の話を聞かせているのだろう。


若菜は杉尾先輩のことが好きだから、辛いだろうな……。


「芙結、どうしたの?」


若菜を見つめて黙り込んでしまった私を、瑞貴が気にかける。

その呼び名で気づいたのだろう。若菜が振り返った。
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