嘘つき運命ごっこ
「あ、芙結、おはよう……!」


私の姿を視界に入れた途端にパッと笑顔を見せた若菜は、杉尾先輩に「友達が来たので」と断り、こちらに向かって駆けてきた。


「芙結、よかった……」


飛び込むように、若菜が私の腕をつかむ。


「いいの?先輩が……」

「うん、さっきたまたま会って声かけられたんだけど、何話せばいいか困っちゃって」


瑞貴をチラッと見ると、言葉を交わさなくても伝わったのか、「俺、先行ってるね」と、手を振ってくれた。


校舎に向かう瑞貴の背中が小さくなる。


「ごめんね、芙結。せっかく瑞貴くんと一緒にいたのに」

「え?そんなの気にしないで。いつも一緒なんだから、朝くらいいいの」

「本当に仲がいいよね。幼なじみで恋人なんて、うらやましい」

「若菜までそんなこと言うの?付きあってないってば」

「えっ、まだ付き合ってなかったの?」

「まだ、とかじゃないから」
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