嘘つき運命ごっこ
「別に、私の手料理なんて大したことないよ。なんとか食べられる程度ってだけだし」

「そういうことじゃないよー。大事なのは、誰が作ったかってことだから」


天を仰いで、どこに向けて放って言っているのか分からない瑞貴に、つい笑いが漏れてしまう。


「だから、そんな大したものじゃないんだって。そんなに言うなら、今度瑞貴にも何か作ってあげる。お弁当とかで」

「えっ、本当!?」


パッと一瞬でこちらに笑顔を見せた瑞貴は、右手の小指を差し出した。


「本当に?絶対?じゃあ、約束」


そんな子どもみたいな行為に笑って、私も右手を出そうとしたけど。


……右手の小指から、赤い糸が伸びている。

それを見て、すぐに手を背中に隠した。


「そ、そんなことしなくても、忘れたりしないから、大丈夫」

「えー、指きりしようよ」

「子どもみたいで恥ずかしいから、やだ」

「ケチー」


私は、再び唇をタコにする瑞貴から目をそらした。
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