嘘つき運命ごっこ
「いや、俺もずっと母さんとふたり暮らしだったから、一通り家事は出来るし。塾がない日くらいは、この家のやり方を教えてくれれば、俺がするけど」


戸惑う学さんに、私は目を見開く。

そっか、パパとふたりきりの時にはずっとひとりで家のことをやっていたから、それが当たり前で、頼るなんて発想すらなかった。


「えーと、じゃあ、お風呂入れてもらいたいです……。お風呂場にある温度調節の……なんていうんだろう、あれ。パネル?あれで、42度設定で」

「分かった。洗濯とかは?」

「ううん、それは」

「あ、悪い、下着とか見られたくないよな。俺は、手を出さないでおく」

「う、うん、そうなの」

「俺の洗濯物、乾いたのがあったら、適当に部屋の前にでも置いておいて。自分のものは自分で畳むから」

「は、はい……」


お風呂場に向かう学さんの背中を見送る。


すごい。さりげなく気遣ってくれたり、進んで動いてくれたり。

これがパパだったら、家事がちゃんとなっていないと嫌な顔をするのに。
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