嘘つき運命ごっこ


目が回るような慌ただしさで準備をして、大荷物を抱え、パパと一緒にタクシーに乗った。


おばあちゃんの家は、うちから車で一時間ほど離れた場所にある。

タクシーの後部座席で、両手に抱えたボストンバッグに目を落とす。

動揺して、いらないものまで持ってきた気がする。

あ、スマホの充電器がない。

でも、モバイルバッテリーは入ってる。よかった。


「ごめんな、芙結。夜に突然連れ出して」


パパが、深く息を吐きながら目元を覆う。


「……ううん、私も、おじいちゃんのこと好きだから、最後のお別れに行くのは当たり前だよ」

「そっか……、そうだな……」
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