嘘つき運命ごっこ
幸せいっぱいの新婚旅行中に、自分の父親が亡くなったことを知らされるなんて、相当辛いと思う。

家に着いたばかりの時には忙しなく動きまくっていたパパは、タクシーに乗ったとたんにぐったりとうなだれた。


おじいちゃん、体を壊しているなんて聞いていなかったから、突然だったのかな……。

それも、パパの疲弊した様子を見て、聞くに聞けずにいる。


幼い頃から、何度も連れて行ってもらった、祖父母の家。

いつも優しいおばあちゃんと、私の顔を見ると嬉しそうにしてくれたおじいちゃん。

私は、ふたりのことが大好きだった。

孫の私に、ずっと優しく接してくれていた。

だけど、理由はそれだけじゃない。

私は、ふたりの右手を見るのが、大好きだった。


祖父母の間には、赤い糸が繋がっていたから。
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